この記事は、FMシアター『異人たちとの夏』について書いています。
『異人たちとの夏』は、有名な脚本家の山田太一の小説で、第1回山本周五郎賞を受賞した作品です。
大林宣彦監督の映画も、1988年公開されました。
あの頃映画 松竹DVDコレクション 異人たちとの夏 [ 風間杜夫 ]
TVでも映画は、何度か放送されています。
今回ラジオドラマになりました。TVドラマにも出演されている名だたる俳優さんが、声だけで演じています。
あらすじ
50歳手前のシナリオライターの原田は、家族に無関心、一人になりたくて離婚する。
家や財産はほとんど妻に持って行かれ、大学生の長男には、父親らしいこともしていない。
家を取られたため、仕事場のマンションで暮らすことにしたが、そのマンションは、ほとんどが事務所で、夜は人影もない。
ある夜、一緒にドラマを作ってきた盟友のプロデュサー間宮が、訪ねてくる。
間宮は、原田の元妻に近づきたいので、原田とはもう仕事はできないと言い放つ。
気持ちが落ち込む原田のもとに、同じマンションで暮らしているという女が原田を訪ねてくる。
一緒にシャンペンを飲もうと誘われる原田だったが、元妻に対する怒りもあり、にべも無く断ってしまう。
女のことが、気になったものの大丈夫だろうと気に留めない原田。
翌日、出かけた浅草で父そっくりの男を見かけ、思わず後を追いかけてしまう。
原田の両親は、原田が12歳のころ、交通事故で亡くなっている。
男は、原田の父親そのもので、家に遊びに来いと原田を誘う。
半信半疑ながら、父の後について行くと、亡くなった母もそこにいたのだった。
二人は、すでに父母よりも年上の原田を、息子として扱う。
原田のことを、がんばったと無条件で褒める両親。
原田の心は、失ったものを取り戻したかのように満たされるのだった。
原田がマンションに戻ると、以前訪ねてきた女と出会う。
拒絶した夜のことを詫びる原田。
女はケイと名乗り、33歳、このマンションの3階に住んでいるという。
原田は、ケイと良い感じになって行く。
原田は、両親は自分の妄想が生み出した幻ではないか、もう一度会ってみようと、再び浅草の家を訪ねる。
両親は、やはり原田の両親で、花札やキャッチボール、母の手料理に原田は満たされて行くのだった。
そんなある日、出来上がった台本をプロデューサーに届けた原田は、顔色が悪く、痩せて、病気ではと指摘される。
マンションに帰ると、ケイからも痩せて顔色が悪いと問いただされる。
両親のことをケイに打ち明ける原田。
ケイは、もう両親には会わないでと懇願する。
しかし、原田は最後のお別れを言いに、両親に会いに行くのだが・・・・。
配役
原田:国広富之
ケイ:鶴田真由
原田の父:松田洋治
原田の母:雛形あきこ
間宮:篠田三郎
原田の元妻:金沢碧
大島宇三郎 阪田マサノブ まどか 三宅貴大 花戸祐介 木原梨里子
早川知子 三浦圭祐 小出恵美子
感想
家族を失った中年男が、幼い頃に亡くなった両親と再会し、父母の無償の愛に触れ、失っていた何かを取り戻すというのがメインストーリーです。
元妻との寒々とした会話に対して、父母のただ息子を思いやる温かさが、心地良いです。
自分たちなしで生きてきた主人公を、無条件でほめ、認めてくれる父母。
父母との優しい幸せな時間が、聴いていると癒されました。
それだけに、別れのシーンで父母が主人公に言う言葉に泣けました。
「こいつはね、十二で両親に死なれてさ、苦労したの。よくやったよ、よくやった。えらいよ。」
「私たちなしで、よく三十六年もやってきたね。」
「気がせいてうまくいえないけど、お前を大事に思ってるよ。」
録音したものを、聴き直しました。すごく良いシーンです。
映画では、父母を片岡鶴太郎さんと秋吉久美子さんが演じていました。
片岡鶴太郎さんと秋吉久美子さんも良かったですが、ラジオドラマの松田洋治さんと雛形あきこさんも最高でした。
松田洋治さんは、映画「家族ゲーム」の子役のイメージが強く残っています。
TVでは、あまりみかけなくなっていましたが、腕の良い寿司職人で、江戸弁の切れが良くて、優しくて気風が良いお父さん役がピッタリとはまっていました。
雛形あきこさんもバラエティの印象が強いですが、優しくて温かいお母さんを演じていました。
鶴田真由さん役は、映画では名取裕子さんが演じていて、もっと妖艶な感じでしたが、鶴田さんは清楚な感じのケイとなっていました。
国広富之さんは、こういう屈折した男性を演じるのが、うまいですね。
昔良く青春ドラマで観ていた篠田三郎さん、金沢碧さんの声も聴けて、お二人が役者さんとして健在であることがうれしかったです。
前編、後編とあり、聴きごたえ十分でした。
中高年の方に、ぜひ聴いて欲しいです。
まとめ
今回は、FMシアター『異人たちとの夏』について書きました。
FMシアターは、ほんとに良質の作品ばかりです。
青春アドベンチャーは、どちらかと言うと若い人向けですが、FMシアターは中高年に向けた題材が多いように思います。
聞き逃した方もらじるらじるで聞き逃し配信がありますので、ぜひ聴いてみてください。
らじるらじるとはインターネットでNHKのラジオ第1、ラジオ第2、FM放送の音声を提供するサービスです。聞き逃し配信として、過去の放送も聴くことができます。但し配信期間は、短いので早めに聴きましょう。
こみや
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