この記事は、ラジオ文芸館「さるの湯」高橋克彦(著)について書いています。
2020年3月16日のラジオ文芸館は、高橋克彦さんの「さるの湯」でした。
話のおもしろさと朗読の巧みな語り口に聞き入ってしまいました。
この作品はほんとうにおすすめです。
「さるの湯」高橋克彦(著)あらすじ
「さるの湯」は高橋克彦さんの短編集『非写真』に収録されています。
幼いころ両親が離婚した私は、母とともに海辺の街を引っ越した。
父は漁師で海辺の街に残り、再婚し、私を引き取った母はまもなく自殺してしまった。
その後、私は施設で育だったのだった。
カメラマンとなった私は、誰に誘われるでもなく東日本大震災で壊滅的な被害にあったふるさとの海辺の街を訪れ、写真を撮っていた。
驚いたことに私が撮った写真には、震災で亡くなった人たちが、愛する人の傍らで笑顔で写り込んでいたのだった。
ほかの人が撮った写真には、亡くなった人は写り込むようなことは一切ないのに。
写真が評判になり、その才能を見込まれて街の世話役から避難所を撮影してほしいと依頼され、私は写真を撮ることになる。
戸惑いながらも写真を撮ると、やはり亡くなった人が穏やかな笑顔で写り込んでいるのだった。
写真を見て嗚咽する被災者たちに、なぜ自分が撮った写真にだけ写り込むのか、自分に何をさせようというのか私は考え込むのだった。
そんなある日、世話役から死んだ人が旅立つ前に入りにくるという山奥の露店の温泉「さるの湯」のことを聞く。
世話役とともに「さるの湯」に撮影に行く私が、そこで見たものとは・・・。
ラジオ文芸館「さるの湯」感想
東日本大震災ではさよならを言う間もなく、それどころか何も分らぬままあっという間に、たくさんの方が亡くなりました。
自分が死んだことを認識できず死んでしまったとき、その魂はどこにいくのでしょうか。
「さるの湯」はさまよう魂が、自分の死を認め、穏やかな気持ちで天に上るまでの居場所になっています。
主人公のように死者が安らかな笑顔で写る写真が撮れたら、残された方にとっては、救いになるのではないかと思います。
なぜ主人公の撮った写真にだけ死者が写るのか、その答えが物語の後半でわかります。
ホラーの要素もありますが、アナウンサーの朗読のうまさもあって聴いていると、やすらかな気持ちになりました。
「さるの湯」は癒しの物語です。
komiya
まとめ
今回は、ラジオ文芸館「さるの湯」高橋克彦(著)について書きました。
komiya
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